経営学の嘘

私は、4年前に監査法人を退職し、自分で経営コンサルティング業を始めました。MBAを持っている訳でもないので、起業の準備段階から、様々なビジネス書を読み漁りました。それらの本を読めば、ビジネスにおける数々の問題解決の答えが見つかると思っていましたし、見つけたいとも思いました。

しかし、結果として、答えは見つかりませんでした。当たり前の事ですが、経営学に書かれている事例は、上場会社の1流企業の例がほとんどであり、それが全ての企業に当てはまる訳がありません。中小企業は、情報が一般に公開されておらず、また、優良企業を探し出すのも難しいので、ほとんど事例には、採用されません。

答えを求めてはいけない

本だけでなく、著名な方々のセミナーも多く出席しました。それによって、大きく自分の中で何かが変わったかというと、何も変わりませんでした。確かな事は、多くのお金を費やしたという事です。

もちろん、それらは「自己投資」という目的で、支出しているのですが、投資でも、株式のように100万円で買った株が、150万円になり、50%のリターンがあった、というような、目に見える形の成果は何もありませんでした。

しかし、答えを求めるという事が、そもそも無理だったという事に気づきました。答えは、自分が考えて見つけなければならず、ビジネス書は、自らが考えるための、ヒントを与えてくれるものでしかないという事です。

考え抜く力がビジネスを左右する

経営者は、考えるという事を避けては通れません。また、学校のテストのような標準的は答えなく、自分の頭で考えて、オリジナルの解を導き出さなければなりません。

もちろん、自分一人を頼るのではなく、他の人の知恵を借りる事も重要です。しかし、考えた結果、決断するのは、経営者自身です。

しかも、限れた時間の中で、決断しなければいけません。あらゆる状況を考慮し、早く、答えを導き出さなくてはなりません

それは、日頃から考える訓練を積んでいないと身につくものではありません。

考えている時に、浮かんでくるもの

考えて、問題解決の方法を見つけ出そうとしている際に、ふと、ビジネス書の一節や、セミナー講師の一言が浮かんでくる時があり、それが、問題解決のヒントを与えてくれる時があります。

それこそ、経営学やビジネス書の役割で、過去からの積み重ねが実務に反映される瞬間です。

経営学は何の役に立つかというと、それを読む事によって、考える訓練をし、アイデアを生み出すヒントを自分の中に蓄積する事ができるという事です。

経営学に書かれている事がそのまま、役立つのではなく、自分自身が、考え抜くための、一つの材料として役に立つのです。

ですから、経営学やビジネス書を読むのは嫌いで、全て、実践の中で思考力を身につけるというのもいいですし、結果としても、その方にとって、経営上の問題解決には支障はないでしょう。

しかし、考えるための手段として、利用し、自分のビジネスに役立てるという事は、決して無駄ではないのです。

結局、決断するのは経営者

経営者は、経営判断に際して、最終責任を負う訳ですが、どのような過程で、戦略を練り、判断を下すかは、千差万別です。

例えば、コンサルタントを活用する、しないも経営者が決める事で、活用しなければ必ずしもいい結果が出ないという事ではありません。

しかし、活用する事により、何かヒントが得られ、それが大きな成果に繋がる事は十分にあるのです。

ただし、答えだけを求めようとすると、期待した効果は得られないでしょう。