1ドル=100円時代の、経営戦略

日銀の金融緩和による、円安がピークを過ぎて以降、一貫して円高トレンドが続いています。円高というと、マイナス・イメージの方が多いですが、日本経済にとっては、必ずしもマイナスとは言えず、円が信頼され、相対的な価値が高まっていることは、むしろ、好ましいと言えます。

円高が、企業業績を悪化させる流れを断つ

しかし、日本企業は、輸出型の大企業が多く、円高→業績悪化というのが、定式となっています。この流れを絶たないことには、企業の業績予想が、為替に大きく左右されることになってしまい、その結果、株価も下落してしまいます。

そのためには、企業が円高を逆手にとって、業績向上につなげる戦略をとっていくしかありません。将来、これからも円高が進み、たとえ、1ドル=80円になろうとも、業績の悪化を最小限に食い止める戦略をとることが、必要になります。

円高が、株安を招く流れを断つ

金融緩和後は、日銀がETF買いにより、円高による、株価下落の下支えを行っていますが、海外の投資家にとっては、円高になれば、株価は割高となるため、輸出型企業以外も、株価が下落するということも、円高がもたらす大きなデメリットとなっています。

実際は、円高により、業績が悪化しない企業についてまで、株価が下落することは、日本企業の国際競争力を損なうものであり、この流れも絶たなければいけません。

企業への投資というのは、本来的には、投資先企業の成長発展に期待し、その企業を応援するという意図を持って、行われるものであり、そのような投資家をファンとして、取り込まないと、短期間での儲けだけを狙う投機家が、株価の乱高下による利益を得ること目的として、集まってくることになり、株価は安定しません。

また、予測不能の為替の影響により、株価が大きく変動すれば、個人投資家は、怖くて日本企業の株を買う気になれず、個人投資は、ますます冷え込むことになります。

従って、企業側としては、長期的な成長ストーリーを投資家に説明し、ファンとなって、長期保有してくれる投資家を増やしいかなければいけません。

日本電産の強気の経営戦略

そんな中で、日本電産の永守会長兼社長は、円高を逆手に取ったM&Aや、「これほど、業績は上がると言っているのに、今、うちの株を売る人はおかしいんじゃないか」といった発言など、独自の成長戦略を実行し、それを投資家にアピールしています。

永守氏は、日本電産を創業し、1代で年商1兆円を超える企業に成長させた、カリスマ経営者で、その経営手腕は高く評価されており、日本電産は、永守氏の言葉通り、右肩上がりの成長を続けています。今の日本のナンバーワン経営者は?と聞かれたら、私は、永守重信氏の名を挙げます。

この円高の乗りきるには、日銀の金融政策に依存するのではなく、日本電産の永守会長兼社長のように、将来に向けての成長戦略のストーリーを企業経営者が、いかに描き、実行するかが鍵となります。

アベノミクスは、為替バブルだったと考えた方がいい

大胆な金融緩和によって人為的にもたらされた、円安により、企業業績や株価は、一時的に上がりましたが、それは、為替相場によるものであり、為替が円高に振れた、今こそ、日本企業の底力が試される時です。

たとえ円高になろうとも、顧客が増え、いい商品やサービスを出し続けているのであれば、企業価値は、上がっているはずです。

時代の変化に対応するイノベーションを行い、日々進化し続ければ、企業業績はそれに、それに伴ない上昇するでしょう。

しかし、企業が危機感を失い、過去の成功体験に囚われ続けるのであれば、新興のベンチャー企業にとって代われますし、また、そのように新しい産業を引っ張っていくベンチャー企業が、もっと日本から生まれていく必要があります。