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経営コンサルタント 公認会計士

財務の果たす3つの役割

財務や、会計には、様々な役割がありますが、その中で、大きく分けると3つの機能があります。それらについて、今回は記載します。

1.財務会計

一般的に会計というと、この財務会計を思い浮かべる方が多いと思います。財務会計は、実際の経営数値に基づくものであり、会社の決算書は、財務会計に従って、作成されています。

決算書は、税務申告の基礎となり、株主への決算数値の報告、配当の支払いの基礎となるものです。

財務会計は、同一の会計のルールにより作成されます。中小企業は、大企業ほど厳格ではありませんが、上場会社であれば、公認会計士の監査が義務付けられており、会社が会計のルールに従って決算書を作成しているかを、外部の専門家がチェックします。

会計のルールは、会計基準と呼ぼれるものであり、海外に進出している上場会社の中には、日本の基準だけでなく、国際会計基準に従って、決算書を作成している会社もあります。

このように、財務会計の特徴としては、会社にとって必ず必要となるもので、実際の数値を使用しており、会計のルールに従って作成される、ということが挙げられます。

2.管理会計

管理会計は、財務会計を基礎としながらも、会社が自社の経営管理や、経営意思決定のために、用いるものであり、実際の数値だけでなく、予定数値や、標準数値が用いられます。

管理会計は、社外に公開する目的ではないので、自社で自由に構築することができます。予算の策定であったり、投資の意思決定、原価管理など、様々な局面で、管理会計は用いられます。

管理会計は、強制されるものではないため、会社の規模が大きくなるについて、整備の必要性が増してくるのが特徴です。大企業になると、自社独自に管理会計制度が整備されていますが、中小企業において、管理会計制度が十分に構築されている会社は、少ないと言えます。

3.財務戦略

財務戦略とは、経営戦略の一環であり、経営者が直接的に関与し、将来のリスクを勘案して、経営の重要な判断を行うための、財務上の方針です。

世界的な低成長下の経済環境の中、経営資源をより有効に、かつ、効率的に使用していくことが求められ、財務戦略は、ますます重要度が高くなっています。

財務戦略の立案には、財務会計や、管理会計の素養が、必要となりますが、経営者は、財務の専門家ではないので、他のマーケティングや、ICTといった経営戦略と同様に、それをどのように活かせば、どのような効果が経営に得られるかという観点を持って、立案にあたります。

例えば、M&Aといった企業にとって、重要な影響を与える経営戦略において、財務戦略が大きな鍵を握っています。将来のリスクを見誤って、多大な借り入れを行い、実行したM&Aが失敗に終われば、企業の継続性が危ぶまれることになります。

財務戦略を成功させるには

財務戦略を成功させるには、社内に専門能力を有する人材を配置するだけでなく、経営者自身が、財務的なセンスを身につけ、リスクマネジメントを適格に行う必要があります。

将来のことを予測することは、非常に困難であり、経営者の仕事に多種・多様にわたり、しかも、経営環境の変化は、どんどんスピードを増しています。

しかし、経営は博打よりも、はるかに成功率は高いはずですので、そのためには、準備を怠ることなく、問題解決にあたることが求められます。


生産性を向上させるには

企業の業績を高めるには、生産性の向上が不可欠です。民間企業だけでなく、生産性を高めるということは、どの組織においても有益です。

生産性を高めるというのは、どういうことか

生産性を高めるというのは、単に、経費を削減するということではなく、時間をいかに有効に使うかということです。

例えば、今まで、1時間で行っていた同様のことを、どうすれば、30分でできるか、今まで、10人で行っていた同様のことを、どうすれば、5人でできるかということを考えることです。

どうすれば、生産性を高めることができるか

生産性を高めるための第1歩は、日常業務の中の、無駄を見つけることにあります。毎日、毎年同じことを行っていると、それが当たり前で、改善の余地や、その必要もないと考えがちですが、そんな様々な業務の中に、生産性を高める要素は、多く詰まっています。

しかし、自分自身では、それに気づかないことが多いのも事実です。そのため、他の人の意見を取り入れたりして、今までとは、別の視点から、取り組む必要も出てきます。

従って、経営者は、常に生産性向上に気を配る必要がありますし、組織全体に生産性を向上させる体質を沁みこませなければなりません。

生産性向上の第1歩

生産性向上の第1歩は、自分や他の人の、時間の価値を尊重することから始まります。時は金なりという言葉通り、自分だけでなく、他の人の時間も大切する気持ちから、生産性向上は、始まります。

会計用語に「機会費用」という言葉があります。これは、仮にその時間を別のことに向けたら、どれくらいの利益を得られたであろうか、ということです。

例えば、人材配置において、適材適所が行えず、従業員の能力が十分に発揮できない場合なども、機会費用が発生していると考えられます。

このように、1人1人の時間をどのように有効に活用するかが、生産性向上に大きな影響を及ぼします。

日本企業は、まだまだ、生産性を高められる

日本のメーカーの優れた工場を見ると、いかに生産性を高めるための知恵が活かされているか、感心させられますが、それでもまだ日本企業には、生産性を高められる余地が多く残されています。

その一つに個人の働き方があり、政府も働き方改革ということで、重点施策を打ち立てていますが、本来は、国から指示されて行うものではなく、自主的に企業が行っていくべきもので、それによって、企業が大きな利益を得られるのであれば、早急に取り組むべきです。

また、政府こそ、生産性をもっと高めるべきであり、例えば、国会の答弁などでの、同じような議論を繰り返しは、まさに時間の無駄でしかありません。

このように、生産性の向上は、官民を問わず、仕事の質を向上させ、強いては、国庫の繁栄に、つながるものです。

 


経営者が知っておくべき、財務体質の改善方法 その3

今回は、経営者が知っておくべき財務体質の改善方法の最後に、損益項目について、記載します。

利益と、現金増減のズレに注意

会社が作成する損益計算書には、当期は、それだけ儲かったという、利益がどれだけかが表示されます。しかしこの、利益が現金の増減と、直接一致はしません。なぜなら、利益が計上されるタイミングと、現金収支のタイミングが異なるからです。

従って、利益の計上されるタイミングと、現金の出入りのタイミングのズレは注意する必要があります。例えば、法人税は、当期の利益に対して、計算し、支払いますが、支払うタイミングは、翌期になり、例えば、前期、多くの利益が計上されていれば、翌期に払う税金は、例え、翌期が急に赤字になったとしても、多くの税金は払わなければならないということです。

資金繰りを考えるにあたっては、この、タイミングのズレに注意しておく必要があります。「黒字倒産」ということも、現実的にあり得る話なのです。

粗利益の把握は、適切か?

粗利益というと、売上から、売上原価を引いたもの言います。その際は、売上は、明確に区分できますが、原価の方を区分するのは、なかなか難しいです。売上原価と、販売管理費について、同じ勘定科目でも、両方に跨るものもあります。

売上原価は、商品・サービスを提供する際に、販売に先立って、必要とされる経費であり、商品を販売するに当たっては、商品を仕入れたり、製造するために必要となる費用であり、サービスであれば、サービスを提供するために、必要である費用です。また、売上に比例して、増減する変動費と、売上に関わらずに、定額に発生する固定費があります。

粗利益を適切に把握することで、売上に対する粗利益率を算出することができ、採算性や、効率性を図ることができます。また、販売価格の算定においても、原価を正しく把握することが、重要となります。

販売管理費について

販売管理費についても、変動費の性質のもの、固定費の性質のものがあります。販促費であれば、売上に比例するでしょうし、本社の地代などは固定的に発生します。

交際費、広告費といった費用は、景気が悪くなると、カットされがちですが、売上に比例する、販売促進の効果がある変動費であれば、カットすることがさらに、売上の低迷に繋がる可能性もあり、そのあたりの見極めも重要になります。

また、研究開発費は、売上原価ではなく、販売管理費に計上されますが、研究開発費についても、毎期、一定額以上支出することで、将来の売上の増加に繋がることが期待される費用であり、こちらの支出についても、どれだけ支出すべきかといった判断が、重要となります。

利益の使い方

当期の儲けを、翌期以降、どのように使っていくも、重要な財務戦略です。配当や、設備投資、人材の増強など、企業の将来のビジョンに沿った使い方を決めていかなければなりません。

先日、麻生財務相が、留保利益に課税することも必要だ、との発言をされていましたが、利益をどれだけ、企業内に残し、どれだけを株主還元や投資に当てるかといった戦略も、日本企業にとって、重要性が増してきています。

以上、財務体質改善について、大まかではありますが、資産、負債、損益について、記載いたしました。

 


経営者が知っておくべき、財務体質の改善方法 その2

前回は、資産項目についての、ポイントを記載しましたので、次は、負債項目について説明します。

負債は、全て計上されているか

負債とは、将来支払わなければならないお金です。将来、どの時期に、いくらの支払義務があるかは、経営者は、頭に入れておかないと、資金繰りを行うことができません。

負債には、未払金。買掛金といった短期に決済されるものだけでなく、リースや、借入金のように、長期にわたるものもあります。また、従業員の退職金についても、金額の正確な見積もりは難しいですが、負債として、頭に入れておかないといけません。

これらの負債を、貸借対照表に計上します。

税務上の差異は、申告調整する

中小企業ですと、税務申告上、損金にならないものを費用として、計上することに抵抗があると考える経営者の方もいらっしゃいますが、会計と税務の差異は、税務申告の別表4で調整すればよく、賞与引当金のように、支払った時に税務上、損金となるものは、会計上は、負債に計上して、申告書で加算するという方法をとります。

長期にわたる負債についての、注意

例えば、借入金の利息については、借入れに伴い、支払われるもので、金額が確定しているものは、未払費用として、負債に計上します。

その際は、借入金は、長期にわたるものでも、全額が負債に計上されますが、支払利息に関わる、未払費用は、その期に対応するものしか、計上されません。

しかし、利息の支払いは長期にわたるので、翌期以降は、毎年どれだけの支払い義務が生じるかも、把握しておかなければいけません。

翌期以降の支払義務は、貸借対照表に載せないので、これについては、中長期の資金繰表等で把握すしておきます。

サプライズの支出を減らす

経営を行っていく上では、どうしても想定外の支出は、発生しますが、事前に把握できるものについて、金額、時期を把握し、金額が確定していなくても、見積もり計算をしておくことで、事前に、経営者は、財務戦略の手を打つことができ、財務体質の急な悪化を、予防することができます。

次回は、最後に損益項目について、コメントします。

 


経営者が知っておくべき、財務体質の改善方法 その1

企業の規模の大小に関係なく、財務体質の改善方法・ポイントにおいて、基本となる部分があります。今回は、もっとも重要となる貸借対照表項目のうち、資産について、記載していきます。

財務体質改善は、貸借対照表から

ご存知のように、会社の財務諸表は、大きく2つに分けると、財政状態を表す「貸借対照表」経営成績を表す「損益計算書」です。

財務体質の改善については、「貸借対照表」の方に着目していきます。

資産項目について

会社の資産には、様々なものがあります。その中には、すぐにお金として換金しやすいもの、しにくいものがあります。

一般的な会社の貸借対照表は、「流動性配列法」と言って、換金しやすい項目の方が、上に並んでいます。

財務体質改善のためには、資産の換金価値が、正しく表示されている必要があります。

言い換えると価値のない資産は、あってはいけないということです。

価値のない資産

価値のない資産とは、どのようなものを思い浮かべますか?

例えば、回収できる見込みが低い売掛金や、手形、売れる見込みのない商品、時価が大きく下がってしまい塩漬けになっている有価証券など、様々なものがあります。

このように価値のない資産が、貸借対照表に載っていると、どうでしょうか?

例えば、100円の売掛金が貸借対照表に載っていても、実際、回収できる売掛金が80円としたら、貸借対照表の載せる金額は、80円に直さなければなりません。

基準が曖昧な、中小企業の会計

株式を上場した、公認会計士の監査が義務づけれている会社が、会計基準に従い、上記のような価値ない資産は、実際の価値に直されますが、中小企業は、公認会計士の監査が義務づけれておらず、会計基準の適用が会社によって、曖昧になっているケースが多いです。

しかし、貸借対照表を見て、経営者が、正しい経営判断を行うためには、価値のない資産は載せるべきではありません。

資産の現在の価値を洗い直す

そのために必要となることは、まず、資産の価値を把握することが重要です。貸借対照表についての、各科目の内訳書に記載されている資産が、価値があるのかどうかを、定期的に洗い直す必要があります。

例えば、売掛金であれば、回収期日が到来しても、回収できていないものがどれくらいあるか、どれくらいの期間回収されていないか

在庫であれば、原価割れしても、売っているものはないか、長期間売れずに残っている在庫はどれくらいあり、それは、将来、売りことができるのか

といったように資産の項目ごとにチェック事項を設けて、見直してみることが必要です。

会社の現在の財政状態を知る

上記の見直しを行い、資産の価値を直してみて、初めて、あるべき会社の財政状態がわかり、それに基づいて、経営者は、正しい経営判断を下すことができます。

上場企業にとっては、当たり前のことでも、中小企業にとっては、見直しのコスト等の問題もあり、そのままとなっているケースも多くあります。また、大きな会社であっても、経営者は経理部門に丸投げして、自らは全く把握していないケースもあります。

財務体質の改善には、経営者も、会社の資産の現在の価値を、正しく把握している必要があります。


経営コンサルティングについて

経営コンサルティングという仕事は、日本では、まだ、広く浸透していません。経営コンサルティングは、公認会計士の監査業務や、税理士の税務業務のように、資格を持っている人たちだけが、行うことができる独占業務ではなく、資格の有無で業務が制限されることはありません。中小企業診断士や、MBA(経営学修士)を持っていたとしても、それによって、独占的に業務が行える訳ではありません。

経営コンサルティングの目的

企業経営者が、経営コンサルティングを依頼する目的としては、自社だけでは解決できない、経営上の問題を解決するためです。経営上の問題は、大きく分けると以下の2つです。

1.企業の継続・成長のために売上を増やすこと

2.生産性を向上させ、利益を増やすこと

売上を増やす

自社以外のリソースにより、専門的な能力、経験、知見を有している人材を活用することで、問題を打破し、アイデアを得ることで、売上を増やし、企業をより成長させていくことが、経営コンサルティングを利用する第1の目的です。特に規模の小さな企業は、売上を確保していくことが生命線であり、売上を増やすことは、最優先事項となります。

生産性を向上させる

企業が大きくなるに従い、管理業務が増えていきます。いかにこれを、適切・スムーズに行っていくかにより、企業の生み出す利益やキャッシュ・フローは大きく左右されます。従って、企業の規模が大きくなるにつれ、生産性の向上についての、要求水準は高くなります。高度な専門的な能力を有した、外部の人材を活用することで、企業の生産性の水準を引き上げることができます。

どのように経営コンサルタントを活用すべきか

上記の2つの目的を達成するためには、企業の規模や、要求に応じて、適切なコンサルタント(コンサルティング会社)に依頼する必要があります。専門分野や、組織的な対応、海外組織との連携の可否など、企業の要求に応じて、ケース・バイ・ケースでコンサルタント(コンサルティング会社)を選別することになります。

経営コンサルタントは、必要なのか?

経営コンサルタントに依頼しても、最終の意思決定や、決定案の実行は、会社側が行っていくので、経営コンサルタントとの関係は、信頼関係を伴った、良好なものでなくてはなりません。外注を使うという感覚ではなく、共同して、自社を、より良くしていく目的に向かっていかなければなりません。会社の命運にも左右する、プロジェクトを依頼するに値するコンサルタント(コンサルティング会社)であれば、大きな利益を会社にもたらすことになるでしょう。

最後に

会社を取り巻く環境は、激変しており、自社だけでは、荒波を乗り越えていくことが、厳しい時もあるでしょう。そんな時、会社にとって強力な味方となってくれる、経営コンサルタントがいれば、一緒に荒波を乗り越えることができます。


1ドル=100円時代の、経営戦略

日銀の金融緩和による、円安がピークを過ぎて以降、一貫して円高トレンドが続いています。円高というと、マイナス・イメージの方が多いですが、日本経済にとっては、必ずしもマイナスとは言えず、円が信頼され、相対的な価値が高まっていることは、むしろ、好ましいと言えます。

円高が、企業業績を悪化させる流れを断つ

しかし、日本企業は、輸出型の大企業が多く、円高→業績悪化というのが、定式となっています。この流れを絶たないことには、企業の業績予想が、為替に大きく左右されることになってしまい、その結果、株価も下落してしまいます。

そのためには、企業が円高を逆手にとって、業績向上につなげる戦略をとっていくしかありません。将来、これからも円高が進み、たとえ、1ドル=80円になろうとも、業績の悪化を最小限に食い止める戦略をとることが、必要になります。

円高が、株安を招く流れを断つ

金融緩和後は、日銀がETF買いにより、円高による、株価下落の下支えを行っていますが、海外の投資家にとっては、円高になれば、株価は割高となるため、輸出型企業以外も、株価が下落するということも、円高がもたらす大きなデメリットとなっています。

実際は、円高により、業績が悪化しない企業についてまで、株価が下落することは、日本企業の国際競争力を損なうものであり、この流れも絶たなければいけません。

企業への投資というのは、本来的には、投資先企業の成長発展に期待し、その企業を応援するという意図を持って、行われるものであり、そのような投資家をファンとして、取り込まないと、短期間での儲けだけを狙う投機家が、株価の乱高下による利益を得ること目的として、集まってくることになり、株価は安定しません。

また、予測不能の為替の影響により、株価が大きく変動すれば、個人投資家は、怖くて日本企業の株を買う気になれず、個人投資は、ますます冷え込むことになります。

従って、企業側としては、長期的な成長ストーリーを投資家に説明し、ファンとなって、長期保有してくれる投資家を増やしいかなければいけません。

日本電産の強気の経営戦略

そんな中で、日本電産の永守会長兼社長は、円高を逆手に取ったM&Aや、「これほど、業績は上がると言っているのに、今、うちの株を売る人はおかしいんじゃないか」といった発言など、独自の成長戦略を実行し、それを投資家にアピールしています。

永守氏は、日本電産を創業し、1代で年商1兆円を超える企業に成長させた、カリスマ経営者で、その経営手腕は高く評価されており、日本電産は、永守氏の言葉通り、右肩上がりの成長を続けています。今の日本のナンバーワン経営者は?と聞かれたら、私は、永守重信氏の名を挙げます。

この円高の乗りきるには、日銀の金融政策に依存するのではなく、日本電産の永守会長兼社長のように、将来に向けての成長戦略のストーリーを企業経営者が、いかに描き、実行するかが鍵となります。

アベノミクスは、為替バブルだったと考えた方がいい

大胆な金融緩和によって人為的にもたらされた、円安により、企業業績や株価は、一時的に上がりましたが、それは、為替相場によるものであり、為替が円高に振れた、今こそ、日本企業の底力が試される時です。

たとえ円高になろうとも、顧客が増え、いい商品やサービスを出し続けているのであれば、企業価値は、上がっているはずです。

時代の変化に対応するイノベーションを行い、日々進化し続ければ、企業業績はそれに、それに伴ない上昇するでしょう。

しかし、企業が危機感を失い、過去の成功体験に囚われ続けるのであれば、新興のベンチャー企業にとって代われますし、また、そのように新しい産業を引っ張っていくベンチャー企業が、もっと日本から生まれていく必要があります。


海賊とよばれた男

「海賊とよばれた男」は、百田尚樹氏による、経済歴史小説で、出光興産の創業者である、出光佐三氏がモデルとなっています。今年の冬には、映画が公開されるようです。

出光興産と言えば、ちょうど、今、昭和シェル石油との合併の問題で、経営陣と創業家とで、意見が対立しており、話題となっています。

日本人の起業家魂

「海賊とよばれた男」では、主人公の起業家魂や、高い志というのが、よく伝わってきます。

ビジネスというものは、また、国家や人種の壁を超えたすばらしいものであるということも、改めて気付かされます。

第2次世界大戦という、激動の時代にあって、主人公が自らの使命を果たしていく姿は、感動を与えてくれます。

現代においても、大きなプロジェクトの実行のために、日夜、奮闘されている方々は、多くいらっしゃいます。

この小説は、その時代だけでなく、現代のビジネスにも、多くつながるものがあリます。

現代の海賊は誰?

高度経済成長の時代にかけて、日本には、多くの偉大な起業家が、誕生しています。では、平成の海賊は誰かと考えると、まず、孫正義氏が、頭に浮かんできます。

経営者というより、投資家という色が濃いため、賛否両論はあるものの、英アーム社を3.3兆円で買収するとの発表があったように、世界を相手にどんどん新たな挑戦を続けていく姿は、現代の海賊と呼んでも、差し支えないでしょう。

孫さんに続く、起業家が、日本にも、これから登場してくると、ビジネスの世界も、もっと面白くなるのではと思います。

これからの日本の経営

ソフトバンクに代表されるように、世界を相手に大きな取引を行う企業が、増加する一方、ローカルでビジネスを行い、小さいながらも、ネットを通じて、世界を商圏とする企業も増えていくでしょう。

インターネットにより、ビジネスにおける国境が取り払われ、より、効率的で、スピードが速く、ユーザーにとって利用しやすいサービスが、普及していくでしょう。

そのような変化の中でも、「海賊とよばれた男」に描かれているような普遍的な起業家魂は、ビジネスを行う上で、これからも大切であることは変わりありません。


日本企業が解決すべき、3つの問題点

日本の企業が、抱える問題点として、どの企業にも、概ね当てはまるものは、①低成長時代における持続的な成長②ホワイトカラーの生産性の向上③人事戦略です。それぞれについて、解決すべき問題点、解決の糸口を挙げていきます。

低成長時代における持続的な成長

日本の人口がこれから将来にわたって、減少していく中、顧客を増やし、売上を伸ばしていくことは、容易ではありません。特に上場企業は、株主からの株価や配当の上昇の期待が強いため、大きなプレッシャーとなります。

そのため、海外に販路を求める、新規事業を始める、M&Aで事業を買うなど様々な戦略を立て、それを実行しています。それでも、円高の逆風もあり、企業業績を継続的に伸ばし、右肩上がりの成長を続けることは、すべての企業にとって大きな課題となっています。

一方、アメリカに目を向けると起業家精神の強い国柄から、シリコンバレーを始めとして、新たな産業が経済成長を支えています。では、日本にシリコンバレーのような場所を創ればいいのでは、とも考えますが、単一民族の集まる日本で、なかなかそのような場所は、生まれません。

では、新しい産業は日本から生まれないかというと、日本人の得意な逆輸出により、アメリカやヨーロッパ発祥のものを日本で、アレンジし、洗練させ、コストを下げ、より売りやすい形で、海外へ売り込み、グローバルな地位を獲得するという手法は、向いています。

自動車産業が典型ですが、他の産業においても、逆輸出できる産業が、まだまだ豊富にあります。このように、日本の得意な手法で、より高度なニュービジネスを創り出すことはできます。

ただ、輸出に頼っていると、今回のイギリスのEU離脱の影響のように、当事者のイギリスやヨーロッパの会社の株価より、日本の会社の株価の方が下落するという、おかしな現象が出てきてしまいます。本来、いい商品・サービスを出し続け、顧客数が増えていれば、為替の変動とは無関係に、企業価値は、上がっていかなければなりません。

そのためには、真のグローバル化を目指し、世界最適を考えた、生産・物流・販売戦略が必要となります。

ホワイトカラーの生産性の向上

日本のホワイトカラーの生産性は、欧米に比して、まだ低いと言われています。生産性の向上のためには、最新の技術を駆使したITインフラを普及させるだけでなく、働き方(ただ、会社にいるだけでなく、何をやり、どのような成果をあげたかを重視するなど)の工夫も必要になります。

間接部門も含めたホワイトカラーの生産性を向上させることにより、仕事の質をより高め、コストを抑えて、より競争力の高い、商品・サービスを提供することが可能になります。

人事戦略

人事戦略と言っても、幅が広く、人の採用、人材育成、給与体系の整備等、実に様々な課題を含んでいます。

日本の人口は、前述のように減少していき、働く人は、減り続ける中、女性をもっと有効に活用したり、人工知能のような技術を、より発達させていくことは、大切ですが、それだけでなく、世界中から人材を求めることも、必要になってきます。

また、役員や、後継者選びについても、社内だけでなく、社外にも有能な人材を求めていくことがより増えていくでしょう。それにより、人材の流動性が高まり、企業に多様性が増すことは、新事業開発等の成長戦略に有効です。

以上のような、企業の持続的な成長を目的とした、グローバル戦略、ホワイトカラーの生産性の向上、人事戦略は、これからも、企業の最重要課題として、取り組み、常に改革を行っていく必要があります

 


儲けるということ

「儲ける」という言葉は、色々な解釈の仕方があり、誤解を生むことも多いです。事業を行う以上、儲けなけばなりません。しかし、お金を儲けることは、利己的で、良くないことという先入観を持っている日本人もいます。

士農工商の名残り

義務教育で、士農工商という言葉は、習いますが、士が、一番偉くて、商人は一番位が低く、お金儲けをしている商人は、卑しい職業であるという先入観を幼少から、植え付けられます。また、テレビの時代劇では、必ず「・・・屋」という名前の悪徳商人が登場し、最後には、成敗されるというストーリーになっています。

このように、お金を儲けることは、利己的で、社会悪であるといった風土が、現代では希薄になっているとは言え、日本人には、根付いている気がします。

お金儲けは、健全であり、美徳である

お金が全く欲しくないという人はいないと思います。お金によって、食べ物や住む場所を得ることができ、他の楽しみも得ることができます。しかし、儲けるという言葉を聞くと、楽をして、金を得ることだという思い違いがあります。

儲けることは、決して楽ではなく、今より、何十倍、何百倍、頭を使うつもりがないとできません。人間が、動物の中で最も優れているのは、頭脳です。体力では、他に優れている動物はいくらでもいます。ただ、動いていることは、働くこととは違うのです。

お金という武器を使って、多くの価値を生み出すことで、さらにお金を増やしていくことは、人類をもっと、進化させ、豊かにします。貧困こそ悪であり、より儲けることで、より多くの人を貧困から救うことができます。

もっと儲けよう

また、儲けるというと、自分で事業を行っている経営者だけにしか関係ないのでは、と思っている人も多いです。しかし、雇用されている方であっても、勤めている会社を儲けさせることに貢献しなければ、自分の給料の原資は得られません。公務員でも、住民の役に立ち、投入されている税金に見合う以上のサービスを与えなければ、給料の原資はありません。

従って、どんな職業に関わらず、一人一人が頭を使って、もっと儲けることを考えなければいけません。

現代における、お金儲け

しかし、儲けると言っても、現代の日本は、作って売れば、誰でも儲かる、高度経済成長期ではありません。だから、高度経済成長期の人達より、もっと、もっと、頭を使わないと儲けられません。

そのためには、動くことではなく、働くことをもっと重視しなければいけません。長時間労働と称して、どれだけ動いても、それは働く(頭を使ってもっと儲ける)ことにはならないのです。

一人一人の働き方の大きな変化によって、これからの日本の経済成長は、達成されることになるでしょう。